「終わったな」 「あぁ。終わった」 「疲れたか?」 「どうして」 「声にいつもの元気が見られない」 「そうか?私は至っていつもと同じだ」 「互いに、多大な犠牲を払った」 「そうだな」 「貴方は悔やまれないのか」 「何に対し」 「大切な仲間と、そして父君を失ってしまったことに対し」 「悔やんでどうなる。皆が帰ってくると、お前は言うか?」 「いや・・・」 「反対に。お前は悔やんでいるのか?奴を失ったことに対し」 「悔やんでいない・・・というのは嘘になるな・・・」 「だがこれは現実だ。失った者は戻ってこない。これもまた現実」 「貴方は強い」 「何故」 「私以上に、大切な者を失っているというのに」 「こうなることは知っていた。事前に心構えが出来たからな」 「父君を失うことも知っておられたのか」 「ギル=ガラドがマンドスへ行くことも知っていた」 「・・・・・」 「それを変えたかった。ギル=ガラドも、父上も失いたくはなかった」 「どちらも大切だったから」 「そう。だが変えることは出来なかった。先見は当たってしまった」 「貴方は、信じ難い未来も、それを現実だと受けとめてしまうのだろうか」 「受けとめるしかあるまい。現実には目を背かない」 「ギル=ガラドは、貴方を愛していた」 「・・・私も愛していた。だが、それはずっと以前に終わった」 「私も、彼を愛していた。とても、とても」 「哀しいか?愛する者を失って」 「とても、哀しい。気を抜けばマンドスへ行ってしまいそうになる」 「私はさらに、父上も失った。マンドスへの道は1歩前にある気がする」 「貴方まで行ってしまったら、私はどうしたらいいのだ」 「私を嫌いだと、そう言っていた子供は何処へ行った」 「頼る者がいなくなる。貴方まで行ってしまったら、私はきっと」 「妻も置いて、マンドスへ行ってしまうか?」 「きっと、そうなるだろう」 「私は行かない。父上との約束だ。私は1度した約束は決して違えない」 「どんな約束を」 「決して死なぬと。永遠に生きると。そう約束した」 「やはり、強い。そんな約束が出来る貴方は、やはり」 「それに私には、まだ愛する者が残っている。定命の者だがな」 「バルドという、竜を倒した人間か。貴方はまた哀しい思いをする」 「それでも。支えがないより、マシだ」 「そうだな」 「お前には妻がいる。私にはバルドを取れば、闇が近付く森しか残らぬ」 「貴方を信じる民がいるだろう」 「・・・・王は弱みを見せぬものだろう。特に民には」 「・・・」 「弱みを見せれる相手を、支えと言うのだ」 「貴方は強い。それでいて、とても哀しい」 「同情なら止めてくれ。ヒヨッ子に同情される覚えはないぞ」 「同情ではない。心の底からそう思う。スランドゥイル」 「ん?」 「大切な者を沢山失ったが。私は貴方が生き残っていてくれて嬉しい」 「何だ、いきなり」 「何だろうな。ふと、そう思った」 「私は、どうとも思わぬ。お前が生きていてもな」 「そう言うだろうと思ったよ。本当に口が悪い」 「いまさらだろうが」 「いまさらだな」 「さて。テントに戻るか。ここは臭くてかなわん」 「確かに。ゴブリンの死臭はオークよりも酷い」 「エルロンド」 「何だ」 「奴の、葬儀の時は、私を呼ぶな」 「・・・・・・何故」 「呼ぶな」 「・・・判った」 「せいぜい、豪勢な墓でも作ってやれ」 「そうだな。貴方の森をのぞめる場に作るとしよう」 「ふん。勝手にしろ」 「あぁ、勝手にするさ」 エルロンドとスランドゥイル様。 五軍の合戦が終結した後、ダゴルラドで2人。 静かに語り合う時。 とりあえず、前の「会話」 「父と子」の続き。 そして完結みたいなお話です。ハイ。 |
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